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研究支援等 分子研リポート2007 | 分子科学研究所

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ここに記載しているのは,直接研究活動を行わないが,研究を遂行する上で,なくてはならない研究支援業務であり, 主に技術課が担当・支援しているものである。特に法人となってからは,全国の分子科学コミュニティの連帯を強め るために,研究支援部門を強化してきた。法人化後に新設された部門には,「安全衛生管理室」,「 広報室 」,「史料編 纂室」がある。

技術課は,研究支援組織の中核になる大きな集団を構成している。分子科学研究所は,共同利用部門を強力に支援 するために,技術課に所属する技術職員を公募で採用し,また研究室配属の技術職員を研究施設に配置転換し,大型 の研究施設を維持管理する部門や共同利用を直接支援する部門を増強した。平成19年4月に組織編成を見直した。

「2-5 構成員」を参照。

安全衛生管理室は,法人化に伴い,研究所の総括的な安全衛生が,労働安全衛生法という強制力を持つ法律によっ て規制されるようになったため,その法律の意図するところを積極的且つ効率的に推進するために設置された。それ までは,設備・節約・安全委員会という意思決定のための委員会が存在していたが,安全衛生の実際の執行は技術課 が一部を担当したものの,専門に執行する組織はなかった。現在,安全衛生管理室には,専任の助教と事務支援員, 十名弱の兼任の職員を配置し,執行組織として,多くの施策を実行している。安全衛生を維持するのに必要な資格は 全て取得している。

広報室も新しい組織である。法人化する前は,単に研究活動報告や要覧誌の発行などを行っていただけであった。 法人化以降は国民に,より積極的に研究所で行っている研究内容を分かりやすく紹介することに重点を置くように なった。そのため,専任の技術職員を1名配置し,非常勤職員1名との2名体制にした。分子研の発行誌も,上述し た観点で見直している。分子研及び分子科学コミュニティの情報を早く且つ分かりやすく伝えるために,ウェブサイ トをリアルタイムで更新し,また事業内容を動画で紹介する企画が進行している。

史料編纂室は法人化後に設置された支援組織としては一番新しい。法人化後まもなく迎えた創立30周年記念行事 の中で分子研設立の経緯を残すことの重要性が認識された。このため,総研大葉山高等研究センターを中心に発足し た「大学共同利用機関の歴史」研究プロジェクトに参加する形で史料編纂室を発足させた。分子研設立の過程と共に, 過去に所員が行ってきた研究,分子科学コミュニティーの形成過程などの歴史をきちんと記録し公開することを目指 している。所はそのために非常勤職員2名を配置した。

4.研究支援等

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4-1 技術課

技術課は所長に直属した技術職員の組織で,2007年4月1日の構成員は,7班15係の総勢37名である。技術職 員は,主に研究施設に配属され,それぞれの持つ高い専門技術で,分子科学の研究を支援している。研究室に配属さ れた技術職員は,研究教育職員と共同して研究を行ううちに,博士号を取得し,他機関へ研究者として転出して行く。 ただし,研究室配属の技術職員は定員削減により廃止の方向で検討が進んでいる。一方,研究施設に配属された職員は, 先端的装置を駆使し,研究教育職員から依頼された業務をこなし,装置の維持管理を行っている。また,研究教育職 員と協力し,施設の運営も行っている。

施設に配属された技術職員が対応する技術分野も幅が広く,依頼を受けて製作・測定する分野としては,機械工作, 回路工作,理化学ガラス製作,計算機プログラミング,広報ポスター・出版物作成,化学分析などがあり,機器の管 理分野では,ネットワークシステム,化学系研究設備有効活用ネットワーク,レーザーシステム,X線解析装置,電 子顕微鏡,E S R ,S Q U I D ,N M R 装置などの維持管理があり,また施設の管理分野としては,計算機施設,装置開発 施設,高圧ガス製造施設,放射光施設,機器利用施設の維持管理業務がある。

安全衛生分野では,基礎生物学研究所並びに生理学研究所とともに,岡崎3機関の安全衛生委員会に安全衛生管理 者として加わった。分子研に於いては,安全衛生管理室に所属し(併任),専任助手に加えて4名の技術課所属衛生 管理者が,毎週職場巡視を行い,分子研の安全衛生管理に寄与している。また,作業環境測定士及び放射線・電気/レー ザー・高圧ガス担当の作業主任者としても安全衛生管理室に加わり,研究教育職員とともに安全衛生を担当している。

技術職員が組織化されたのは,1975年に創設された分子科学研究所技術課が日本で最初である。技術職員が組織 化したことで,直接待遇改善につながったが,組織化の効果はそれだけでなく,施設や研究室の狭い枠に留まってい た支援を,広く分子科学分野全体の研究支援を行うことができるようになり,強力な研究支援体制ができあがった。 支援体制の横のつながりを利用して,分子研への見学・視察の際の見学先との交渉,スケジュールの作成等,事務セ ンターと技術課が協力し行っている。

しかし,分子研の場合,施設に配属された技術職員は,研究室に配属された技術職員に比較すると,流動性に乏し いので,組織と個人の活性化を図るために,積極的に次のような事項を推進している。

4-1-1 技術研究会

施設系技術職員が他の大学,研究所の技術職員と技術的交流を行うことにより,技術職員相互の技術向上に繋がる ことを期待し,1975年度,分子研技術課が他の大学,研究所の技術職員を招き,第1回技術研究会を開催した。内容 は日常業務の中で生じたいろいろな技術的問題や失敗,仕事の成果を発表し,互いに意見交換を行うものである。そ の後,毎年分子研でこの研究会を開催してきたが,参加機関が全国的規模に広がり,参加人員も300人を超えるよう になった。そこで,1982年度より同じ大学共同利用機関の高エネルギー物理学研究所(現,高エネルギー加速器研 究機構),名古屋大学プラズマ研究所(現,核融合科学研究所)で持ち回り開催することになり現在に至っている。 1996年度より国立天文台や大学も交代で開催するようになった。表1に今までの技術研究会開催場所及び経緯を示す。

表1 技術研究会開催機関

年度 開催機関 開催日 分科会 備考

昭和 50 分子科学研究所 昭和 50 年 2 月 26 日 機械 名大 ( 理 )( 工 ) のみ

昭和 51 分子科学研究所

昭和 50 年 7 月 20 日 機械 学習院大など参加

昭和 51 年 2 月 機械、(回路) 名大 ( 工 ) 回路技術

(3)

昭和 52 分子科学研究所

昭和 52 年 7 月 機械 都城工専など参加

昭和 53 年 2 月 機械、(回路) 名大プラ研回路技術

昭和 53

分子科学研究所 昭和 53 年 6 月 2 日 機械、回路

技術研究会について討論会 分科会形式始める 高エネルギー物理学研究所 昭和 53 年 10 月 27 日 機械技術

昭和 54

分子科学研究所 昭和 54 年 7 月 機械、回路、電子計算機 電子計算機関連の分科会を創設

高エネルギー物理学研究所 昭和 54 年 10 月 19 日 機械

分子科学研究所 昭和 55 年 2 月 機械、回路、電子計算機

昭和 55

高エネルギー物理学研究所 昭和 55 年 10 月 24 日 機械

分子科学研究所 昭和 56 年 1 月 30 日 機械、回路、電子計算機、低温

低温分科会を創設 技術課長 内田 章

昭和 56

分子科学研究所 昭和 56 年 7 月 機械、回路、電子計算機、低温 高エネルギー物理学研究所 昭和 56 年 1 月 30 日 機械

昭和 57 高エネルギー物理学研究所 昭和 58 年 3 月 17-18 日 機械、回路、電子計算機、低温

技術部長 馬場 斉

3研究機関持ち回り開催が始まる 昭和 58 分子科学研究所 昭和 59 年 3 月 2-3 日 機械、回路、電子計算機、低温

昭和 59 名古屋大学プラズマ研究所 昭和 59 年 11 月 15-16 日

機械、ガラス , セラミック、低温回路、電 子計算機、装置技術

実行委員長 藤若 節也

昭和 60 高エネルギー物理学研究所 昭和 61 年 3 月 19-20 日

機械、計測制御、低温、電子計算機、装置 技術

技術部長 山口 博司 昭和 61 分子科学研究所 昭和 62 年 3 月 19-20 日 機械、回路、電子計算機、低温

昭和 62 名古屋大学プラズマ研究所 昭和 63 年 3 月 29-30 日 機械、回路、低温、電子計算機、装置技術 昭和 63 高エネルギー物理学研究所 平成元年 3 月 23-24 日

機械、計測制御、低温、電子計算機、装置 技術

技術部長 阿部 實 平成元 分子科学研究所 平成 2 年 3 月 19-20 日 機械、回路、低温、電子計算機、総合技術 2ヶ所で懇談会 平成 2 核融合科学研究所 平成 3 年 3 月 19-20 日

機械、低温、計測制御、電子計算機、装置 技術

平成 3 高エネルギー物理学研究所 平成 4 年 2 月 6-7 日

機械、低温、計測制御、電子計算機、装置 技術

平成 4 分子科学研究所 平成 5 年 3 月 11-12 日 装置 I、装置 II、低温、電子計算機

実行委員長 酒井 楠雄 3研究機関代表者会議 平成 5 核融合科学研究所 平成 6 年 3 月 23-24 日

機械、低温、計測制御、電子計算機、装置 技術

技術部長 村井 勝治 研究所間討論会 平成 6 高エネルギー物理学研究所 平成 7 年 2 月 16-17 日

機械、低温、計測制御、電子計算機、装置 技術

技術部長 三国 晃 研究所間討論会 平成 7 分子科学研究所 平成 8 年 3 月 18-19 日

機械、回路、計測制御、電子計算機、化学 分析

技術課長 酒井楠雄

研究所間懇談会 化学分析を創設

平成 8

国立天文台・電気通信大学共催 平成 8 年 9 月 19-20 日

計測・制御、装置・回路計算機・データ処

初めての分散開催 大阪大学産業科学研究所 平成 8 年 11 月 14-15 日 機器分析

名古屋大学理学部 平成 9 年 2 月 6-7 日 装置開発 A ,B 、ガラス工作 北海道大学理学部 平 9 年 2 月 27-28 日 低温

平成 9

核融合科学研究所 平成 9 年 9 月 11-12 日 機械、回路、低温、電子計算機、装置技術 静岡大学 平成 9 年 11 月 27-28 日 機器分析

工学部、情報学部、電子工学研究所 各技術部の共催

平成 10

名古屋工業大学 平成 10 年 11 月 26-27 日 機器・分析

高エネルギー加速器研究機構 平成 11 年 3 月 4-5 日 工作、低温、回路・制御、装置、計算機 インターネット討論会

平成 11

東北大学 平成 11 年 11 月 11 日 機器・分析 分子科学研究所 平成 12 年 3 月 2-3 日

装置、回路、極低温、電子計算機、ガラス 工作

インターネット技術討論会

平成 12

福井大学 平成 12 年 9 月 28-29 日 機器・分析 東北大学 平成 13 年 3 月 1-2 日

工作、装置、回路、極低温、情報・ネット ワーク、材料・物性開発、地球物理観測

平成 13

大阪大学 平成 13 年 11 月 15-16 日 機器・分析 核融合科学研究所 平成 14 年 3 月 14-15 日

工作、装置、計測制御、低温、計算機デー タ処理

技術部長 大竹 勲

平成 14 東京大学 平成 15 年 3 月 6-7 日

工作、装置、回路、極低温、情報・ネット ワーク、生物科学、機器・分析、地球物理 観測、文化財保存、教育実験・実習

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平成 15

三重大学 平成 15 年 11 月 20-21 日 機器・分析

高エネルギー加速器研究機構 平成 16 年 2 月 26-27 日 工作、低温、回路・制御、装置、計算機 技術部長 三国 晃

平成 16

佐賀大学 平成 16 年 9 月 16-17 日 機器分析を主とし全分野

大阪大学 平成 17 年 3 月 3-4 日

工作、装置、回路・計測制御、低温、情報 ネットワーク、生物科学、教育実験演習 実習

平成 17

岩手大学 平成 17 年 9 月 15-16 日 機器・分析 分子科学研究所 平成 18 年 3 月 2-3 日

機 械・ ガ ラ ス 工 作、 回 路、 低 温、 計 算 機、 装置

技術課長 加藤 清則

平成 18

広島大学 平成 18 年 9 月 14-15 日 安全衛生、計測制御、機器・分析など全分野

名古屋大学 平成 19 年 3 月 1-2 日

機械・ガラス工作、装置技術、回路・計測・ 制御、低温、情報ネットワーク、生物、分 析・環境、実験・実習

平成 19

富山大学 平成 19 年 8 月 23-24 日 機器・分析 核融合科学研究所 平成 20 年 3 月 10-11 日

工作低温、装置、計測制御、計算機デー タ処理

技術部長 山内健治

4-1-2 技術研修

1995年度より,施設に配属されている技術職員を対象として,他研究所・大学の技術職員を一定期間,分子研の 付属施設に受け入れ技術研修を行っている。分子研のような大学共同利用機関では,研究者同士の交流が日常的に行 われているが,技術者同士の交流はほとんどなかった。他機関の技術職員と交流が行われれば,組織の活性化,技術 の向上が図れるであろうという目的で始めた。この研修は派遣側,受け入れ側ともに好評だった。そこで,一歩進めて, 他研究機関に働きかけ,受け入れ研修体制を作っていただいた。そうした働きかけの結果,1996年度より国立天文 台が実施し,1997年度には高エネルギー加速器研究機構,1998年度からは核融合科学研究所が受け入れを開始した。 法人化後は,相互の受け入れ体制が整っていないためにまだ実施件数は少ないが,今後活発になるものと考えている。 表2,3に分子研での受け入れ状況を示す。

表2 過去の技術研修受入状況

年 度 受 入 人 数(延)

平成 7 年度 6

平成 8 年度 12

平成 9 年度 13

平成 10 年度 7

平成 11 年度 6

平成 12 年度 13

平成 13 年度 47

平成 14 年度 96

平成 15 年度 59

平成 16 年度 8

平成 17 年度 6

平成 18 年度 6

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表3 技術研修受入状況(2007.1.1 〜 12.31)

氏  名 所  属 受入期間 備  考

小澤 忠夫 名古屋工業大学 平成 19 年 2 月 15 日 講演

熊谷 宜久 神戸大学 平成 19 年 3 月 5 日 -3 月 6 日 理化学ガラス機器製作研修 立花 健二 名古屋大学 平成 19 年 6 月 4 日 -6 月 15 日 装置開発室機械工作研修 熊谷 宜久 神戸大学 平成 19 年 10 月 11 日 -10 月 12 日 理化学ガラス機器製作研修 森本 浩行 名古屋大学 平成 19 年 10 月 5 日 -3 月 28 日 UV S OR 研修

熊谷 宜久 神戸大学 平成 19 年 11 月 1 日 -11 月 2 日 理化学ガラス実験機器製作研修 伴  和紀 九州大学 平成 19 年 12 月 12 日 -12 月 13 日 装置開発室機械工作研修 山之内真司 九州大学 平成 19 年 12 月 12 日 -12 月 13 日 装置開発室機械工作研修

表4 研修受講実績(平成19年度)

研 修 名 開 催 機 関 日 程 参 加 者

平成 19 年度前期放送大学 愛知学習センター 4/06 〜 9/06 吉田、青山、近藤(聖)、内藤、豊田 平成 19 年度後期放送大学 愛知学習センター 10/06 〜 3/07 牧田、水川、中野、岩橋

4-1-3 人事

人事の活性化を図るために,人事交流を行ってきた。法人になってからは,広く人材を登用するため,公募採用も 取り入れた。

人事交流

長期間,同一職場に勤務すると,慢性のために活力が低下しがちである。転勤が少ない職場での人事異動は,組織 と個人の活性化に不可欠である。1995年3月から,一定の期間,所属を移して勤務する人事交流を行ってきた。し かし,法人化後は,手続きが確定していないため停止せざるを得ない状況となった。

人事交流実績

装置開発室/名古屋大学理学部

極端紫外光実験施設/北陸先端科学技術大学院大学

法人化後の技術課人事

年月日 事項 配属班 備考(前職あるいは転出先)

2004 年 4 月 1 日 採用 機器開発技術班 名古屋大学 2004 年 4 月 1 日 採用 光計測技術班 東北大学

2004 年 10 月 16 日 採用(公募選考) 研究・広報技術班 基礎生物学研究所 2005 年 4 月 1 日 採用(公募選考) ナノサイエンス技術班

2005 年 4 月 1 日 採用(公募選考) ナノサイエンス技術班

2005 年 12 月 転出 研究・広報技術班 極端紫外光科学研究系助手 2006 年 2 月 1 日 採用(公募選考) 計算科学技術班

2007 年 1 月 1 日 採用 計算科学技術班 沼津高専 2007 年 3 月 15 日 転出 研究・広報技術班 静岡市役所 2007 年 12 月 31 日 転出 学術支援班 日本電子データム

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4-1-4 受賞

早坂啓一(1995 年定年退官) 日本化学会化学研究技術有功賞(1986) 低温工学協会功労賞(1991)

酒井楠雄(2004 年定年退官) 日本化学会化学技術有功賞(1995) 加藤清則 日本化学会化学技術有功賞(1997) 西本史雄(2002 年辞職) 日本化学会化学技術有功賞(1999) 山中孝弥 日本化学会化学技術有功賞(2004)

石村和也 WATOC2005 Best Poster Diamond Certificate(2005) 堀米利夫 日本化学会化学技術有功賞(2005)

鈴井光一 日本化学会化学技術有功賞(2007) 吉田久史 日本化学会化学技術有功賞(2008)

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4-2 安全衛生管理室

安全衛生管理室は,研究所における快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて,職場における職員の安全と 健康を確保するための専門業務を行うことを目的として,平成16年4月に設置された。安全衛生管理室には,室長, 専任及び併任の安全衛生管理者,安全衛生管理担当者,化学物質・放射線・高圧ガス・ 電気・レーザーなどのそれぞ れの分野を担当する作業主任者が置かれている。安全衛生管理者は,少なくとも毎週1回 明大寺・山手両地区を巡視 し,設備,作業方法又は衛生状態に危険及び有害のおそれがあるときは,直ちに,職員の健康障害を防止するための 必要な措置を講じている。また,職場の安全衛生を推進するために必要な,作業環境測定(必要に応じ外部に委託)や, 保護具,各種の計測機器,文献・資料,各種情報の集中管理を行い,分子研における安全衛生管理の中心としての活 動を行っている。

また安全衛生管理室では,分子科学研究所全職員に対する安全衛生教育も行っており,そのための資料作成,各種 資格取得の促進,専門家の養成などを行っている。雇い入れ時の安全衛生教育は年度初旬に定例として行なう他,講 習テキストと講習会 D V D を用意し,年度途中の採用者に対しても,随時雇い入れ教育が可能となるよう配慮している。 また長期滞在する外国人研究者のため,英文の安全衛生講習会テキストの作成,講習会 D V D の英訳字幕の挿入等の 作業なども進め,外国人研究者への配慮も行っている。外国人に対しては,すでにこの教材を用いた安全衛生教育を 進めている。雇い入れ教育用の D V D 教材,特に英語版教材については,改善の余地も残されており,今後も改訂作 業を継続していく。

安全衛生に必要な情報は,管理室の W E B ページ(http://i nfo.i ms.ac.j p/safety /)にまとめており,必要な規則や書式 に即座にアクセス可能である。また,管理室員全員のメールアドレスが入っているメーリングリスト(saf ety @ i ms. ac . j p)も設定してあり,各種の質問などに機動的に対応できる体制になっている。1年に数回,分子研安全衛生委員 会(岡崎3機関の「安全衛生小委員会」に相当)と合同で連絡会議を開催し,所内の安全衛生状況に関する情報交換, 連絡の徹底等が円滑に行なわれる体制を採っている。

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4-3 広報室

2007年度の「広報室」の活動を以下に報告する。

4-3-1 分子研ホームページ

現在のホームページは2005年に作成して以来,「トピックス欄」の増設,バナーの設置など誌面を魅力あるものに するための様々な改訂を行ってきたが,いくつかの問題が表面化していた。そのひとつは「トピックス欄」が途絶え がちになったことである。その大きな理由は研究者が投稿する原稿が専門的に過ぎ,それを親しみ易い原稿に改訂す るために専門職員(技術職員)の負担が過大に成り過ぎたことによる。この問題を解決するため,「トピックス」原 稿の内容については広報室担当教員がチェックし,執筆者に改訂を請求するようにした。この改善により,少なくとも, 毎月ひとつは,新たな「トピックス」が追加されるようになった。もうひとつの特徴的な問題は,分子研共同利用業 務との連携が不十分だったことである。すなわち,分子研ホームページにアクセスした研究者が共同利用申請に至る までの「流れ」が「見えにくい」という問題が指摘された。この問題を解決するために,共同利用研究のページに「利 用の手引き」や「機器一覧」等を追加するなど大幅な見直しに着手した。

以上のように,広報室ではホームページをより魅力あるものにするための様々な改善を行ってきたが,それらは「継 ぎはぎ」的な改訂であり,他の先進的な大学や研究機関のホームページに匹敵する「親しみ易い」ホームページにす るためには全面的な改訂が必要であるという認識に至った。このため,広報室では「ホームページ改訂ワーキンググ ループ」を発足させ,所内の若い研究者の協力を得て,全面改訂の作業を進めている。「動画」なども効果的に利用 することにより,より親しみ易いホームページとなるよう企画が練られている。この改訂によって,研究面でのアク ティビティーはもとより,共同利用研としての意義と具体的な利用の仕方,総研大を含む教育面での貢献等について,

「誰が見ても直ぐ分かる」画面が生み出されることが期待される。

4-3-2 A nnual R eview 誌

A nnual R ev i ew 誌は分子科学研究所の研究活動を外国に発進するための唯一の年間レヴュー誌として重要な役割を 果たしてきた。しかしながら,現在の A nnual R eview は論文の「アブストラクト」を単に寄せ集めたような体裁になっ ていて,「ほとんど読む気にならない」という声が出ていた。このことは単に外国の研究者に分子研の存在を知らし める点においてマイナスであるだけではなく,特に,外国からの留学生を引きつけるという意味においてはより致命 的な欠陥であるという認識にいたった。このため広報室では本年度 A nnual R ev i ew 誌の全面改訂 ( 写真 ) を行った。 主な改訂のポイントは以下のとおりである。

(1) 研究内容の紹介を「アブストラクト」ではなく,図やポンチ絵などを含めてトピックス的にわかり易くまとめる。 (2) 研究者や研究スタッフの写真を載せ,研究所の「顔」が見えるようにする。

(3) 全体をカラーにする。

4-3-3 プレスリリース

現在,大学法人化に伴い研究成果を社会にアピールするための活動,特に,新聞,テレビなど報道機関への発信を 強化することが求められている。分子研における取り組みのレベルについては様々な議論があり,現在,所内で意見 を取りまとめつつあるが,「できるだけ分かり易い形で」研究成果を社会に発信していくことの必要性については, コンセンサスが得られていると考えられる。このような要請を受けて,広報室ではプレスリリースまでの手続きの簡

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素化など報道機関への情報発信を支援し,奨励するための取り組みを行った。このような取り組みの結果,プレスリ リースに関する研究者の積極的な申し出が出始めており,今後,さらにその件数が増加することが期待される。

一方,その発信内容を「分かり易くする」という点では,まだまだ努力が必要であり,いくつかの解決すべき問題 が残されている。そのひとつは「分子科学」という学問分野そのものの特殊性にあり,「物理」や「化学」に関するバッ クグラウンドが全く無い一般人に研究成果を「分かり易く」説明することが果たして「可能かどうか」,そもそもそ れが「必要であるかどうか」,「どのようにしてそれが実現できるか」という根本的な問いを発する必要がある。実は この問題は分子科学に限らず広く多くの学問分野に共通する課題であり,厳に,留意しなくてはならないことである と考える。即ち,一般社会の理解を得やすい課題がややもすると重要視され,それが学問そのものの発展にとって真 に良いこととなるのかと言う問題である。この問題は社会への説明責任とそのあり方,もっと広くは,「科学と社会 の関わり」に深く関係している。いずれにしろ,所内における特別な部門の創設も含めて更に検討を加えていくべき 課題であろう。

A nnual R eview 2007 表紙

プレスリリース用資料

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4-4 史料編纂室

4-4-1 はじめに

分子研は平成16年に創立30周年を迎え,その翌年(平成17年)「史料編纂室」が分子研南実験109号室に設置 された。それ以来,アーカイブズ活動を行っている(分子研リポート2006参照)。分子研の設立の歴史はかなり長く, 分子研設立の勧告が日本学術会議から出されたのは昭和40年であったが,国内事情により分子研設立まで十年の歳 月が経過した。日本化学会は昭和38年に化学研究将来計画委員会を設け,化学の諸分野から提案された6研究所に ついて設立案が検討され,学術会議の審議を経て分子研設立が勧告された。分子研創設に至る長い年月にわたる貴重 な記録や歴史的な資料(とくに分子研設立に関連する種々の委員会の議事録や配付資料など)を可能な限り収集・保 管することはアーカイブズの観点から極めて重要である。

4-4-2 昨年までの状況

史料編纂室では,これまで,「分子研設立に至った経緯」,「準備室時代」,「創設第1期」などの史料の収集・整理 を 行 っ て, そ の 目 録 を 作 成 す る と と も に「 文 書 保 存 箱 」 に 収 納 す る 作 業 を 進 め て い る。 昨 年 度 の 分 子 研 リ ポ ー ト 2006(38 ページ)では,長倉三郎先生および井口洋夫先生から提供された史料について紹介した。長倉先生から提 供された史料は,1)学術会議の勧告以前に設けられた「日本化学会将来計画委員会」の動向,2)学術会議の勧告以 後の「分子研小委員会」の動向,3)「分子科学特定研究」の課題などに関するものである。井口先生からの史料は,1)分 子研準備室時代,2)分子研創設初期のものなどである。

4-4-3 今年度の活動状況

今年度は,長倉先生から新たに次のような追加史料が提供された。1)第2回化学研究将来計画委員会議事録(昭 39),2)農化・薬学との J oi nt C ommi ttee 議事録(昭39),3)分子科学サーキュラー(第 2 号)に掲載された「分 子研設立計画について」の長倉先生の手書き原稿,4)分子科学特定研究の申請書(昭45),中間報告(昭46),報 告(昭48),5)分子研創設準備会議第1回(昭和49)から第6回(昭和50)まで,6)「分子科学研究所 前史」(長 倉著)化学研究将来計画委員会の審議から創設準備室の設置まで。

さらに,細矢治夫氏(お茶の水女子大名誉教授)・岩田末廣氏(分子研名誉教授)から分子研に関する次の資料が 提供された。1)分子研サーキュラー N o.1–19(ただし N o.13–15 欠落),2)創設協力者会議第1回(昭50)−第14 回(昭51),3)分子科学研究会会報 No.1(昭42)から No.12(昭46),第4期(昭50)−第11期(昭61),4) 分子科学若手の会—夏の学校(昭39),会報 N o.2, 4(昭48)など。その他,岡崎統合事務センターからは分子研 の評議員会,運営協議員会,運営連絡会議,学会等連絡会議などの議事録や配付資料など多数が提供された。

最近,総研大はじめ,種々の共同利用研究所(核融合研,高エネ研など)においてアーカイブズ活動が活発に行わ れている。そうした研究機関のアーカイブズ室(史料室)との連携を保つことはアーカイブズに関するノウハウを得 るのに非常に参考になっている。具体的には,核融合研「アーカイブズ打合せ」(毎月1回),総研大プロジェクト「大 学共同利用機関の歴史」研究会(平成19年3月)および「大学共同利用機関の歴史とアーカイブズに関する打合せ(E A D による資料目録共有化の検討および作業)」(平成19年9月),そのほか U C L A - K E K - 総研大の国際シンポジウム(平 成19年8月)などに参加し,アーカイブズについて有益な多くの情報が得られた。

最後に,今後の方針であるが,上記の共同利用機関アーカイブズ室との連携を保ちながら,史料の収集・保管を進 めるとともに,史料の複写およびデジタル化(PD F ),共同利用研との史料共有化の作業も検討していく。

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4-5 社会との交流

4-5-1 自然科学研究機構シンポジウム

自然科学研究機構シンポジウムは,著名なジャーナリストであり本機構の経営協議会委員でもある立花隆氏によっ て提案・コーディネイトされ,下記のようにこれまでに計4回開催されている。

第1回:「見えてきた! 宇宙の謎。生命の謎。脳の謎。科学者が語る科学最前線」,サンケイプラザ(東京都千代 田区),2006年3月21日。

第2回:「爆発する光科学の世界—量子から生命体まで—」,東京国際フォーラム(東京都千代田区),2006年 9月24日。

第3回:「宇宙の核融合・地上の核融合」,東京国際フォーラム,2007年3月21日。

第4回:「生命の生存戦略 われわれ地球生命ファミリーは いかにして ここに かくあるのか」,東京国際フォーラム, 2007年9月23日。

そもそも本シンポジウムは,自然科学研究機構が国内最高水準の学術的アクティビティーを有しながら一般にはほ とんど知られていないという現状を残念がられた立花氏が,コーディネーターとして自ら進んで計画されたものであ る。氏は,東京大学教養学部で担当されているゼミナールの受講生とともに事前に講演者に取材を行い,最先端の研 究内容をいかに面白く,かつ,分かり易く伝えるかについて,貴重なご助言をされてきている。そのおかげもあり, 事前に予約受付をした500名以上の参加者で毎回会場は満席となり,また,ほぼ丸一日を費やす盛り沢山なプログラ ム編成にも関わらず途中退席する人はほとんどいない。

本シンポジウムに対して,分子科学研究所は以下のような様々な企画で積極的に関与してきている。まず,第1回 において,「21世紀はイメージング・サイエンスの時代」と銘打ったパネルディスカッション中で,岡本裕巳教授が

「ナノの世界まで光で見えてしまう近接場光学」というタイトルで講演を行った。第2回目は,講演会全体の企画を 分子学研究所が中心となって行なった。全講演のうちの半数を分子研のスタッフ(松本吉泰教授、平等拓範准教授、 加藤政博教授、大森賢治教授、江東林准教授)が担当し,中村宏樹所長が閉会の挨拶で締めくくった(詳細は分子研 リポート2006を参照)。なお,本講演会の収録集が,本年度10月に(株)クバプロより出版された。また,本シン ポジウムでは,講演会の開催と併せて,展示コーナーを設けてビデオやパネルを用いた説明を行なってきている。短 い休憩時間をぬって展示スペースを訪れ熱心に質問をされる参加者の方々も多く,「研究の面白さ」を伝える試みが 一定の成果を挙げていることが実感される。

機構シンポジウムは,今後も春秋年2回ペースでの開催が検討されている。第5回は,生理学研究所が中心となっ て2008年3月20日に開催予定である。

4-5-2 分子科学フォーラム

分子科学研究所では『分子研コロキウム』という名前で所員に向けた分子科学のセミナーを開催し,2007年12 月で803回目を終った。これとは別に,分子科学の内容を他の分野の方々や一般市民にも知らせ,また分子研コロキ ウムよりはもう少し幅広い科学の話を分子研の研究者が聞き,自分の研究の展開に資するようにすることを目的とし たセミナーも有益であろうという考えの元に,豊田理化学研究所の協力を得て開催するに到ったのが『分子科学フォー ラム』である。豊田理化学研究所の理事を長年つとめておられる井口洋夫先生の紹介によりこれが可能になり,実際 の運営はコロキウム委員が担当している。年度毎に年間計画を前年度末に豊田理化学研究所の理事会に提出し,承諾 を得てから実施している。

(12)

分子科学フォーラムは年6回開催している。第1回は1996年9月にシカゴ大学教授の岡 武史先生,第2回は同年 10月に生理学研究所名誉教授の江橋節郎先生に講演をお願いし,現在までに71回開催されている。今年行われた講 演の中では,大阪大学教授の菊池誠先生によるニセ科学のお話(第69回)に,岡崎近郊の中高校生,市民の方々が たくさん参加され,会場が満席になった。また,市民と研究者を交えた活発な討論が行われた。講演内容では,第 37回の東京大学助教授の高野陽太郎先生,第43回の立花隆さんの講演の他は,自然科学の先生によるお話であった。

この様に,分子科学フォーラムは分子研コロキウムより幅広い人を対象にしたセミナーで,大学院生や社会人も含 めた多くの方々に対して,分子科学やその関連分野の最先端の研究成果をわかりやすく紹介する事を基本趣旨として, 講演者に工夫をお願いしている。毎回簡単な講演要旨を事前に講演者に書いてもらい,それを愛知県内の大学や岡崎 市内の色々な機関に送ると共に,分子研ホームページにも載せている。一般市民の参加数は会毎に大幅に変るので, 開催案内はかなりいきわたっていると思われる。テーマや講演者の選考,広報の仕方等にコロキウム委員のアイディ アが大いに入ってくるので,委員には負担ではあるが,その時毎に結果の出るやりがいのある活動となっている。こ れが分子研と一般社会とのつながりにより大きく貢献するものになっていくことが期待される。

回 開催日 テーマ 講演者

66 2 0 0 7 . 1 . 1 0 夢を現実にする空間の化学

北川 進

 (京都大学大学院工学研究科教授)

67 2 0 0 7 . 2 . 2 8

宇 宙 史 の 暗 黒 時 代 に 迫 る — 最 遠 銀 河 の発見、補償光学、次世代望遠鏡—

家 正則

 (自然科学研究機構国立天文台教授)

68 2 0 0 7 . 3 . 7

ナノフォトニクス

—光技術の質的変革—

大津元一

 (東京大学大学院工学系研究科教授)

69 2 0 0 7 . 6 . 1 3 ニセ科学を考える

菊池 誠

 (大阪大学サイバーメディアセンター教授)

70 2 0 0 7 . 6 . 2 7

量子乱流—もうひとつのダ・ヴィンチ・ コード—

坪田 誠

 (大阪市立大学大学院理学研究科教授)

71 2007.11.14 ナノテクノロジーで生命を測る

馬場 嘉信

 (名古屋大学大学院工学研究科教授)

4-5-3 岡崎市民大学講座

岡崎市教育委員会が,生涯学習の一環として岡崎市民(定員 1,500 人)を対象として開講するもので,岡崎3機関 の研究所が持ち回りで担当している。

分子科学研究所が担当して行ったものは以下のとおりである。

開催年度 講 師 テーマ

1975 年度 赤松 秀雄 化学と文明 1976 年度 井口 洋夫 分子の科学

1980 年度 廣田 榮治 分子・その形とふるまい 1981 年度 諸熊 奎治 くらしの中のコンピュータ 1982 年度 長倉 三郎 分子の世界

1983 年度 岩村  秀 物の性質は何できまるか

(13)

1987 年度 齋藤 一夫 生活を変える新材料 1988 年度 井口 洋夫 分子の世界

1991 年度 吉原經太郎 光とくらし 1994 年度 伊藤 光男 分子の動き 1997 年度 齋藤 修二 分子で宇宙を見る

2000 年度 茅  幸二 原子・分子から生命体までの科学 2003 年度 北川 禎三 からだで活躍する金属イオン

2006 年度 中村 宏樹 分子の科学、独創性、そして東洋哲学

4-5-4 その他

(1) 安城市民公開講座等

安城市教育委員会が,生涯学習の一環として安城市民(公開講座は,一般市民約100名,シルバーカレッジ(2年 間)は,熟年者約50名)を対象として開講しているもので,岡崎3機関の研究所が協力して,講師を派遣している。

分子科学研究所が担当して行ったものは,以下のとおりである。 安城市民公開講座

開催日 テーマ等 講 師

2002. 8.10 ナノテクノロジーの話 夛田 博一 助教授

2003. 7.19 レーザー入門〜光の基礎からレーザー研究の最前線まで〜 平等 拓範 助教授

安城市シルバーカレッジ

開催日 テーマ等 講 師

2002. 6. 6 鏡に写った分子の話 魚住 泰広 教 授

2003. 6. 5 分子の振動を観測して蛋白質のメカニズムを明らかにする 北川 禎三 教 授 2004. 7. 6 原子のさざ波と不思議な量子の世界 大森 賢治 教 授

2005. 9. 9 動物の進化 宇理須恆雄 教 授

(2) 岡崎商工会議所(岡崎ものづくり推進協議会)との連携

岡崎商工会議所は産学官連携活動を通じて地元製造業の活性化と競争力向上を目的に「岡崎ものづくり推進協議会」 を設立し多くの事業を行っている。この協議会と自然科学研究機構の岡崎3研究所との連携事業の一環で,会員であ る市内の中小企業との交流会を,2007年6月22日および10月9日に分子研で行った。商工会議所が推し進める「も のづくり」には製造業を主体としていることから第1回は技術課機器開発班,第2回は電子機器・ガラス機器開発班 が中心となって対応した。

交流会は技術課機器開発班および電子機器・ガラス機器開発班の持つ技術領域と関連深い企業,また研究部門から の依頼開発で直面している技術的問題点などを課題とした内容から適合する業種の企業が選定され実施された。第1 回の参加企業は機械系を中心に鍛造,精密加工,放電加工,研磨,溶接,接着の分野から7社,第2回は電子系を中 心にプリント基板設計,電子回路設計の分野から4社の参加で行われた。交流会の内容は,自己紹介の後,レーザー

(14)

機器開発研究の平等研究グループの研究室見学および装置開発室の施設見学を行い,その後,相互の技術内容紹介お よびそれぞれの技術班が取り組んでいる技術課題などから「ものづくり連携」の可能性について意見交換を行った。

この交流会を機に現在,マイクロチップレーザー用ヒートシンクの新規製作法開発と有機磁性体の研究で用いる圧 力セルの銅合金系高強度材料の開発が市内の企業の協力で進んでいる。

また,岡崎ものづくり推進協議会が主催する「ものづくり岡崎フェア2008」が2008年2月15,16日の2日間に 渡って岡崎市竜美丘会館に於いて開催され,自然科学研究機構の岡崎3機関として3研究所のニーズを紹介するブー スを出展した。分子研からは前述した交流会から発展した「ものづくり連携」について,技術課機器開発班が市内企 業との開発事例をパネルで紹介した。

(15)

4-6 理科教育への協力

4-6-1 スーパーサイエンスハイスクール

分子科学研究所は平成14年度以来文部科学省が推進してきた「スーパーサイエンスハイスクール事業」に岡崎高 校を支援する形で協力してきた。この事業は昨年度で一旦終了したが,岡崎高校は継続事業として平成19年度より 始まる S S H 事業に応募し,この提案が文部科学省より採択された。分子科学研究所も引き続きこの事業を支援して いくことに合意した。具体的には永田准教授および中村准教授が下記のテーマで岡崎高校のスーパーサイエンス部活 動を支援している。

(1) 化学班の実験指導,およびプレゼンテーション指導。

研究テーマは「三層系を用いた光合成型電子移動反応の観察」「フェロインを用いた化学振動」など。 (2) 物理班の実験指導。

研究テーマは「超伝導体YBCO(YBa2Cu3O7–x) の作成と高温超伝導実験」など。

4-6-2 国研セミナー

このセミナーは,岡崎3機関と岡崎南ロータリークラブとの交流事業の一つとして行われているもので,岡崎市内 の小・中学校の理科教員を対象として,岡崎3機関の研究教育職員が講師となって1985(昭和60)年12月から始 まり,毎年行われている。

分子科学研究所が担当したものは以下のとおりである。

回 開催日 テーマ 講 師

2 1986. 1.18 分子研の紹介 諸熊 奎治 教 授

3 1986. 6. 7

シンクロトロン放射とは

 (加速器・分光器・測定器の見学)

渡邊  誠 助教授 春日 俊夫 助教授 6 1986.10. 4 人類は元素をいかに利用してきたか 齋藤 一夫 教 授 9 1987. 6.13 レーザーの応用について 吉原經太郎 教 授 12 1987. 9.26 コンピュータで探る分子の世界 柏木  浩 助教授 15 1988. 7. 2 目で見る低温実験・発光現象と光酸化現象 木村 克美 教 授

18 1988.10.29 人工光合成とは何か 坂田 忠良 助教授

21 1989. 6.24 星間分子と水—生命を育む分子環境— 西  信之 助教授 24 1989.10.21 常温での超伝導は実現できるか 那須奎一郎 助教授 27 1990. 6.23

目で見る結晶の生成と溶解

—計算機による実験(ビデオ)—

大瀧 仁志 教 授

30 1990.10.20 電気と化学 井口 洋夫 所 長

33 1991. 6.22

自己秩序形成の分子科学

—分子はどのようにしてリズムやパターンを作り出すか—

花崎 一郎 教 授 37 1991.12.14 からだと酸素,そしてエネルギー:その分子科学 北川 禎三 教 授 39 1992. 7. 7 サッカーボール分子の世界 加藤 立久 助教授 42 1992.11.13 炭酸ガスの化学的な利用法 田中 晃二 教 授 45 1993. 6.22 化学反応はどのように進むか? 正畠 宏祐 助教授 48 1993.10. 1 宇宙にひろがる分子の世界 齋藤 修二 教 授

51 1994. 6.21 分子の動き 伊藤 光男 所 長

(16)

54 1995. 6.20 生体内で活躍する鉄イオン—国境なき科学の世界— 渡辺 芳人 教 授 57 1996. 6.28 分子を積み上げて超伝導体を作る話 小林 速男 教 授 60 1997. 6.13 生体系と水の分子科学 平田 文男 教 授 63 1998. 6.12

電子シンクロトロン放射光による半導体の超微細加工

—ナノプロセスとナノ化学—(UV S OR 見学)

宇理須恆雄 教 授 66 1999. 6. 8 レーザー光で,何が見える? 何ができる? 猿倉 信彦 助教授 69 2000. 6. 6 マイクロチップレーザーの可能性 平等 拓範 助教授 72 2001. 6. 5 ナノメートルの世界を創る・視る 夛田 博一 助教授 75 2002. 6. 4 クラスターの科学—原子・分子集団が織りなす機能— 佃  達哉 助教授 78 2003. 6.24 科学のフロンティア—ナノサイエンスで何ができるか? 小川 琢治 教 授 81 2004. 6.22 生命をささえる分子の世界—金属酵素のしくみを探る 藤井  浩 助教授 84 2005. 6.28 環境に優しい理想の化学合成 魚住 泰広 教 授 87 2006. 6.20 電気を流す分子性結晶の話 小林 速男 教 授 90 2007. 6.15 光で探る生体分子の形と機能 小澤 岳昌 准教授

4-6-3 小中学校での出前教室

岡崎市内の小中学校を対象に,物理・化学・生物・地学に関わる科学実験や観察を通して,科学への興味・関心を 高めることを目的に,岡崎市教育委員会や各小中学校が企画する理科教育に協力している。

分子科学研究所が担当したものは以下のとおりである。 岡崎市教育委員会(出前授業)

対象校 開催日 テーマ 講 師

六ツ美北中東海中 2002. 1. 25 光学異性体とその活用 魚住 泰広 教 授 東海中 2003. 2. 18 計算機を使って分子を見る 谷村 吉隆 助教授

常磐南小 2005. 2. 7 光の不思議 岡本 裕巳 教 授

東海中 2006. 2. 8 モルフォ蝶とナノ化粧品の秘密 小川 琢治 教 授 美川中 2007. 2. 26 生物から学ぶ光と色 小澤 岳昌 助教授

矢作西小 2007.12. 4 原子の世界 櫻井 英博 准教授

岡崎市立小豆坂小学校(親子おもしろ科学教室)

回 開催日 テーマ 講 師

1 1996.12. 5 極低温の世界(液体窒素) 加藤 清則 技官 3 1997.12. 4 いろいろな光(紫外線、赤外線、レーザー光) 大竹 秀幸 助手

17 2004.11.30 波と粒の話 大森 賢治 教授

23 2007.11.27 身の回りにも不思議はいっぱい 青野 重利 教授

(17)

4-6-4 職場体験学習

岡崎市内及び近隣の中学校及び高等学校の要請により,職場体験学習「生徒自身が短期間ながらも自ら体験した仕 事と人間関係から希望に満ちた勤労観を育ませ,それを進路選択の一助にしてもらおう」として中・高生の受け入れ に協力している。

期 間 学校名 人 数

2007. 6.13 〜 2007. 6.15 岡崎市立甲山中学校 3

2007. 8. 7 豊田西高等学校 3

2007. 8.22 〜 2007. 8.23 岡崎市立竜海中学校 3 2007.10.17 〜 2007.10.19 豊橋市立中部中学校 1 2008. 1.23 〜 2008. 1.25 岡崎市立竜南中学校 1

4-6-5 その他

(1) おかざき寺子屋教室

(社)岡崎青年会議所との共催で岡崎市内の小学校高学年を対象に,岡崎3機関の研究者が講義・実験を行い,学 校では普段体験できないことを体験してもらい,小学生に科学に対しての夢や憧れを持ってもらうために実施するも のである。1995年より年1回行われ,岡崎3機関の研究所が順に担当していたが,(社)岡崎青年会議所の都合で, 2006年度をもって終了した。

分子科学研究所が担当したものは以下のとおりである。

回 開催日時 会 場 講 師 テーマ

1995.11.11(土) 13:00-16:00

岡崎地域職業訓練センター

井口 洋夫 名誉教授 加藤 立久 助教授

めざそう理科博士

1996.10.26(土) 12:30-15:00

岡崎商工会議所中ホール 鹿野田一司 助教授 低温物理学実験

1999.10.23(土) 13:30-16:00

岡崎コンファレンスセンター 分子科学研究所

谷村 吉隆 助教授 目指せ! 科学者

2002.10.19(土) 14:00-16:30

分子科学研究所 魚住 泰広 教 授 僕も私も名探偵

11

2005. 5.29(日) 14:00-16:30

山手3号館大会議室 宇理須恆雄 教 授

アトム誕生

—ナノテクノロジーの世界— 備 考

参加者:小学校5〜6年生 40〜50名程度

(2) 中学校理科副教材の作成

岡崎市・岡崎市教育委員会・理科教育振興協会の要請により,市内の中学生に,岡崎3機関の研究内容を知らせる ことで,生徒の自然科学に対する興味,関心を高めることを目的とした,理科副教材の作成に協力している。一般公 開を行った研究所が,翌年に協力し作成することが慣例になっている。作成にあたっては,各項目ごとに市内中学校 の理科担当教諭及び中学生徒2名程度が,分子科学研究所の担当教官を訪問して,インタビューを行い,両者が協力 して,資料を作成する。

(18)

中学校理科副教材(冊子)

「分子のしくみ」 1998年9月発行

中学校理科副教材(パネル)

「分子で見る物質の世界」、「光で分子を見る」、「鏡に映った形の分子(光学異性体)」、

「ナノサイエンス 10億分の1の世界」 2001年10月作成

(3) 岡崎市小中学校理科作品展

2007年10月7日の日曜日,中央総合公園で開催された「岡崎市小中学生理科作品展」に分子研ブースを出展し, パネルによる研究所紹介に加えて,一日実験教室を実施した。見附孝一郎准教授が講師として参加し,色素増感太陽 電池と酸化チタンカラフル塗装の実体験の手伝いをした。小学生から大人まで,多くの参加者に太陽電池を作製して いただき,起電力を競ったり,オルゴールを動作させたりして楽しんでいただいた。この太陽電池は,2枚の導電性 ガラスの一方にハーブティーの色素を沈着させた酸化チタンを付け,他方には鉛筆を塗り付け,それらの間にヨウ素 電解質溶液を挟むことにより容易に作ることができる。動作原理はかなり高度な内容を含むため,すべてを理解して もらうことは困難だったが,全員がその構造の簡単さと性能の高さに驚き,研究所に対する期待や憧れを抱く子供達 もいたようである。

(19)

4-7 一般公開

研究活動や内容について,広く一般の方々に理解を深めていただくため研究所内を公開し,説明を行っている。現 在では岡崎市にある3つの研究所が輪番に公開を実施しているので,3年に1回の公開となっている。公開日には実 験室の公開と講演会が行われ,約2,000人の見学者が分子研を訪れる。

回 数 実施月日 備   考

第1回 1979.11. 9 (F ri) 創設記念一般公開 第2回 1980.11.15 (S at)

第3回 1981.11.14 (S at) 3研究所同時公開 第4回 1985. 5.11 (S at) 10周年記念一般公開 第5回 1988.11. 5 (S at) 入場者 1700 人 第6回 1991.10.26 (S at) 入場者 1974 人 第7回 1994.11.12 (S at) 入場者 2700 人 第8回 1997.11.15 (S at) 入場者 2400 人 第9回 2000.10.21 (S at) 入場者 1183 人 第10回 2003.10.25 (S at) 入場者 1600 人 第11回 2006.10.21 (S at) 入場者 2058 人

(20)

4-8 見学者受け入れ

自然科学研究機構岡崎3機関の見学者受入は,事務センター総務課企画評価係が窓口になって行われており,その 中で分子科学研究所の見学分については,技術課が中心となってその対応にあたっている。年間およそ300名が来訪 している。

年度 受入件数 見学者数 見学受入機関名

1990 10 250

(財)レーザー技術総合研究所

東京工業大学理学部応用物理学科学生 ほか

1991 3 110

静岡県新材料応用研究会

名古屋大学工学部電気・電子工学科学生 ほか

1992 7 162

三重大学技術職員研修会

慶応義塾大学理工学部化学科学生 ほか

1993 9 211

(財)名古屋産業科学研究所超伝導調査研究会 東京工業大学化学科学生 ほか

1994 7 145

(社)日本化学工業界技術部

慶応義塾大学理工学部化学科学生 ほか

1995 4 122

日本電気工業会名古屋支部 静岡県高等学校理科研究会 ほか

1996 7 180

(財)新機能素子研究開発協会

明治大学付属中野中学・高等学校理科教員 ほか

1997 9 436

(財)科学技術交流財団

慶応義塾大学理工学部化学科学生 ほか

1998 6 184

東京地方裁判所司法修習生 開成高等学校 ほか

1999 8 206

愛知県商工部

愛知県高等学校視聴覚教育研究協議会 ほか

2000 12 225

(財)衛星通信教育振興協会 東京農工大留学生 ほか

2001 8 196

中部経済産業局統計調査員協会 愛知県立豊田西高等学校 ほか

2002 5 118

関西工業教育協会

静岡県立浜松西高等学校 ほか

2003 8 146

中部経済連合会 一宮高等学校 ほか

2004 11 198

中部電力(株) 立命館高等学校 ほか

2005 10 317

自動車技術会中部支部

慶煕大学(K yung hee University) ほか

2006 8 144

山梨県立都留高等学校

西三河地区理科教育研究会 ほか

2007 8 303

愛知教育大学、(社)電気学会、(社)半田法人会、 岡 崎 市 保 健 所 関 係 者、 光 ヶ 丘 女 子 高 等 学 校、 瑞 穂 市 議 会関係者、安城南高等学校、海陽学園中学校

参照

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